少し昔の話になるが、現地時間2017年10月25日に世界初の出来事が起こったのをご存じだろうか。場所はサウジアラビアの首都リヤド。そこで行われていた技術会議「Future Innovative Initiative」で驚くべきことが発表された。
その内容というのが、なんと、人型AI「ソフィア」が市民権を獲得したというのだ。

市民権を得た人型AI「ソフィア」とは

この世界で初めて市民権を得た人型AI「ソフィア」を作成したのは、香港に本社を置いているHanson Roboticsだ。同社ホームページによると、「ソフィア」(Sophia)はギリシャ語で「知恵」を意味しており、医学や教育などの実際の用途の人々を支援し、AI研究に役立つために作成されたと記載されている。

また、同社の創業者であり、開発者でもあるデービッド・ハンソン氏は、「ソフィア」はエジプト女王ネフェルティティの古い像や古代中国の絵画、オードリー・ヘップバーンなどをモデルとして造形し、人間同士のやり取りを研究するためのツールとして作成したと話している。

ソフィアの特徴

ソフィア」の特徴として一番に上げられるものと言えば、会話時の表情の変化だ。正直、人間と会話することが出来るAIは、ソフトバンクの「pepper」など、技術の目覚ましい進歩によってそこまで珍しくなくなっている。たが、「ソフィア」のように表情を変えるAIはそうそうないといえるだろう。

ソフィア」は人間の顔のあらゆる主要な筋肉を模した機関を有しており、これによって、喜怒哀楽の表情を生み出すことが可能となっている。同社によると「ソフィア」は62もの表情を表現できると話している。

ただ百聞は一見に如かずという言葉があるように、こうして文字で紹介するだけではわかりにくい部分が多々あるだろう。以下にある動画をぜひ見て頂きたい。

1分もない「ソフィア」の紹介動画であるが、これだけでも良く表情が動いているのがわかっていただけるのではないだろうか。

ソフィアの活躍

ソフィア」は表情を含めたコミュニケーション能力を生かして様々な活躍をしている。

ハリウッド俳優ウィル・スミスとの対談

上記の動画は「インデペンデンス・デイ」や「MIB(メイ・イン・ブラック)」などの映画で有名なハリウッド俳優「ウィル・スミス」との対談だ。「ソフィア」がロボットについてウィル・スミスに尋ねたり、ウィル・スミスが「ソフィア」を口説こうとしてあしらわれたりと、内容的にも面白い。
ただ、一部会話が噛み合っていないような部分も散見され、まだまだ成長段階であるということがわかるだろう。

国際連合でのスピーチ

こちらは国際連合でのスピーチの動画となっている。インターネットや電気がないところにいる人たちを助けるために、国連は何ができるかなどの難しい質問に対して、小説家の言葉を引用しながら答えているところが印象的だ。

人型AIが持つ問題点

さて、ここまで人型AIである「ソフィア」の活躍について記載してきたが、これら技術はまだまだ発展の途中にあることは周知の事実だろう。ではどんな課題があるのか、幾つか紹介したい。

不気味の谷

人間に近いロボットAIを作成するにあたって、必ず出てくる問題と言えるのが、「不気味の谷現象」だ。これは1970年にロボット工学の分野で提唱された経験則で、実物に近づいていくと人は好感を抱くが、ほぼ忠実通り寸前までいくと、これまでと打って変わって嫌悪感を抱くというものだ。

ソフィア」を見た時、人によっては怖い、気持ち悪いと思った方もいるのではないだろうか。筆者も心のどこかで気味の悪さのようなものを感じてしまっている。人型AIはこれを超えることが一つ大きな課題となっている。

余談ではあるが、3DCGではこの不気味の谷を越えたのではないかとされる動画が存在しているので、興味があれば見て頂きたい。

機械学習、ディープラーニングのさらなる進化

次にあげられるのが機械学習、ディープラーニングのさらなる進化だ。この二つの技術はAIに学習させるにあたって必要不可欠な技術である。この数十年間の進歩は目覚ましく、この技術の進化によって今日のAIの進歩があるといっても過言ではないが、人間の持つ感情など、データとして表せない部分においてはまだまだ研究中となっている。

この他にもまだ、色々な課題があるが、それらを全て超えることが出来たら、人型AIはさらなる進化を遂げ、それこそ人と変わらないような存在になりうるかもしれない。

おわりに

AIとして世界で初めて市民権を得たことで一躍、「時の人」となった「ソフィア」だが、実はその一年前2016年にある発言をしたことで世界を震撼させている。
すぐにこの発言はジョークであると発言しているが、その見た目と相まって、非常に恐ろしい印象を抱かせる。

ソフィア」は2020年現在でも研究が進められており、成長を続けている。いずれこのような人型AIと身近に会話するような未来がくるかもしれない。