近年、技術の向上もあり、目覚ましい成長を遂げているAI。
次々とAIを使った新しい技術が様々な分野で活躍を始めているが、
実は芸術の分野でもAIを使って作品を作ろうとしている動きがあることをご存知だろうか?
今回はそんなAIが作った絵画についてご紹介したい。

AIが描いた絵画

2018年10月、アメリカ競売大手、クリスティーズのオークションで1枚の肖像画が出品された。
タイトルは「Edmond de Belamy, from La Famille de Belamy(エドモン・ド・ベラミー)」。
黒い服を着た紳士の肖像画で、絵の右下には作者のサインの代わりに数式が記されている。
顔はぼやけて不明瞭であり、キャンパスには余白の部分もみられ、正直なところ一見完成された絵とは思えないが、最終的に43万2500ドル(約4,740万円)もの大金で落札された絵画の作者がAIなのである。

Edmond de Belamy, from La Famille de Belamy(参照元:https://obvious-art.com/)

フランスを拠点に活動するアーティストグループ「Obvious(オブビアス)」

この絵画を制作したのはフランスでAIを使って絵画を作成しているアーティストグループ「Obvious(オブビアス)」
彼らはGerative Adversarial Network(GAN)という機械学習アルゴリズムに古典的な肖像画約1万5000点を処理させ、肖像画法の規則性を理解させることで作品を作り上げた。
オークションに出展された「Edmond de Belamy, from La Famille de Belamy(エドモン・ド・ベラミー)」は、
このAIが作り上げた11点の作品群「ベラミー一族」の中の1点であり、他にも数多くの作品を作り上げている。
興味のある方は是非一度彼らのHPを覗いてみていただきたい。
Obvious(オブビアス)HP

AIによって蘇ったレンブラント

レンブラントは17世紀ごろ活躍したオランダ人の画家で、光と影の明暗を明確にする技法から、光の魔術師などの異名を得ている有名な画家の一人である。
代表作は『夜警』で、社会の教科書などにも載ったこともあるので見たことがある方も大勢いるだろう。
そんなレンブラントの新作が2016年4月発表された。
過去に描かれた未発表の作品などではない、完全なる新作だ。
もちろんレンブラント本人が描いたのではない。彼は1669年に亡くなっている。
この新作を作成したのがAIなのである。

「The Next Rembrandt」プロジェクト

この作品を作ったのが、Microsoft、オランダの金融機関ING、マウリッツハイス美術館、レンブラント博物館、デルフト工科大学などからなるチームだ。
「The Next Rembrandt」と銘打たれたこのプロジェクトでは、レンブラントの作品346点をスキャニングしてデータ化し、AIにディープラーニングをさせることによりレンブラントの絵の特徴を覚えさせた。そこからレンブラントが良く描いていた肖像画をモチーフにし、顔の各パーツのレイアウト比率や服、その他描き方の特徴などを細かく再現するためそれぞれアルゴリズムを開発、約500時間もの時間をかけ描き出した。
作り上げられた作品はレンブラントが描いたと言われても信じてしまうぐらいの出来栄えである。
興味のある人は是非一度その目で確認していただきたい。

AIの絵画に出てくる問題

上記オークションでの高額な落札や「The Next Rembrandt」プロジェクトなどによって、AIが絵画を描く挑戦は大きな話題となったが、同時に一つの問題が上げられるようになった。
それはAIの著作権を認めるかについてである。

AIに著作権は認められるのか?


著作権とは、著作者が自己の著作物の複製・翻訳・放送・上演などを独占する権利であり、知的所有権の一つである。
AIの著作権の有無について問題となっているのは経済的な著作権は除いた点であり、人間であることを前提として作られていた、著作者人格権を認めるのか、認めたとしてどこまで認めるのかなどで意見が分かれている。

また、今回の絵画についてはAIがこの絵画を作成するにあたり、オープンソースコードを使用していることがわかっており、完全な著作権を主張することができるのかについても議論されている。

まとめ

少し前まで、AIにクリエイティブなものは作れない、不可能と言われていた。
それが今ではこうして有名なオークションに出展され、高額な金額で落札される作品を作れるようになっていたり、本物と見紛うほどの作品を作り上げられるようになっている。
今回紹介した「Obvious(オブビアス)」や「The Next Rembrandt」プロジェクト以外にも、AIを使って絵画に挑戦しているところは数多くあり、今後も技術の進歩とともに成長していくことが見込まれている。
そう遠くない未来に有名な美術館にAIが描いた絵画が飾られることもありうるかもしれない。